前回に引き続き今回も,「伝える内容を明確に理解していること」に関する解説です。今回は,技術士二次試験を通して認識した「伝える内容を明確に理解していること」の重要性です。
■技術士二次試験の口頭試験での出来事
技術士二次試験(建設部門)の口頭試験を受けたときのことです。一人の面接官から「あなたが経験問題注1)で書いた〇〇について説明してください」という質問がありました。〇〇はFEM解析(有限要素法解析)に関することです。
そこで,「△△です」と回答しました。このように回答したら今度は△△に関する質問を受けました。「□□です」と回答すると,さらに□□に関する質問を受けました。「エッ?」と思いましたが「◇◇です」と回答しました。回答した後,この面接官から「わかりました」との発言がありました。ここでやっと〇〇に関する一連の質問が終わりました。○○に関して3回連続した質問だったので驚きました。
〇〇に関して「理解している」だったので3回の質問に対してすべて回答できました。〇〇に関して「理解したつもり注2)」だったら2回目あるいは3回目の質問に回答できなかったと思います。
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技術士二次試験の口頭試験での出来事を通して「伝える内容を明確に理解していること」の重要性を認識しました。
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注1):過去にあった筆記試験での試験項目です。過去に体験した業務の中から技術士としてふさわしいと思う業務を2件選び,これらの内容に関して与えられた質問に答える問題です。
注2):「理解したつもり」については,「『君の書いた技術文書はわかりやすい』と言われる技術文書の書き方(その34)」を参照のこと。
■質問されるとわかる
技術士二次試験の口頭試験での出来事わかるように「理解している」で質問に対して回答できます。「理解したつもり」では質問に対して回答できません。「質問に回答できない内容(説明できない内容)=理解したつもり」と考えることができます。自分が「理解している」と思っても「理解したつもり」では質問されても人に説明できません。
ある内容に対して「理解したつもり」か「理解している」かを確認する方法として「自問してみること」があります。「なぜ〇〇なのか?」と自問しこの質問に回答できない内容(説明できない内容)があればその内容は「理解したつもり」です。
書き手が理解している状態で書くことで内容を明確に伝えることができます。書き手が「理解したつもり」の状態で書いても内容を明確に伝えることができません。読み手は知らない人だからです。
次回に続きます。
【参考文献】
森谷仁著,「マンガでわかる技術文書の書き方」,オーム社,令和4年3月25日