技術者は,自分の技術力をお客様に提供することで,お客様から技術力に対する費用をいただきます。そのため,技術者に最も必要なものは技術力です。
技術力とは,言い換えると,お客様に販売する商品です。したがって,技術者は常に自分の技術力を向上させ,顧客満足度の高い商品をお客様に提供する必要があります。つまり,技術者は,常に,技術力という商品の品質の向上に努める必要があります。
では,お客様に販売する商品は技術力だけでしょうか。 いいえ・・・技術力だけが商品ではありません。「伝達力」も商品の1つです。 では,なぜ,伝達力が商品なのか・・・・・?
例えば,自分が担当した業務の報告書を書くことを考えます。報告書を書く目的は,業務で検討した内容の伝達と記録です。特に,伝達は,読み手が報告書を読んだとき,読み手にその内容が明確に伝わることで初めて成立します。
しかし,それが成立していない報告書をときどき見かけます。例えば,「検討方針や検討手順が書いていない」,「自分の判断に対する根拠を書いていない」,「図や写真を添付していないため内容がわかりにくい」,「文章が羅列して書かれているため,内容がわかりにくい」といった報告書です。
このような報告書を作成する書き手には伝達力が欠けています。すなわち,読み手に内容が明確に伝わる報告書(文書)を書く力,言い換えると,わかりやすい報告書(文書)を書く力が欠けています。
報告書はお客様に販売する商品の一つです。しかし,読み手に内容が明確に伝わらない報告書は欠陥商品だと思います。このような報告書(商品)を販売したら,顧客満足度は低くなります。
このため,技術者は,伝達力の品質向上にも努める必要があります。しかし,技術者の中では,伝達力の品質向上が忘れ去られているような気がします。
では,なぜ,忘れ去られているのか?
それは,文書を書く書き手の勘違いが最も大きな原因だと思います。「自分が書いた文書(例えば,報告書)は読み手も自分と同じように理解できるだろう」と錯覚してしるからです。そのため,「伝達力の品質向上に努める意識」が出てこないからだと思います。
しかし,書き手と読み手は違います。書き手は「知っている人」,読み手は「知らない人」です。そのため,書き手が書いた文書を,書き手と読み手が同じ理解度で読むことはできません。
例えば,報告書を考えると,書き手が行った業務に関して両者が持っている情報量はまったく違います。書き手は自分が行った業務なので業務に関する詳細な情報を持っています。すなわち,書き手は「知っている人」です。逆に,自分が行った業務ではないので,読み手は業務に関する情報を持っていません。すなわち,読み手は「知らない人」です。
「知らない人」に内容を明確に伝えるには当然,配慮が必要なのにそれを怠っています。それでは,読み手が自分と同様に理解してくれることなど到底期待できません。
では,どのようにすれば,伝達力の品質が向上するか? その方法1つは,書き手の意識を変えることです。「書き手と読み手は違う」という意識を持てばよいです。
すなわち,「書き手は知っている人」と「読み手は知らない人」ということを認識すればよいです。これを言い換えると,「読み手のことを考えて(読み手の立場に立って)文書を書く意識を持つ」です。
この意識を持って文書を書けば,伝達力の品質が必ず向上します。例えば,報告書を書く場合,読み手は知らない人だから,「自分の判断に対する根拠を書こう」,「図や写真を添付しよう」と思います。
技術者の方々も,常に,伝達力の品質向上に努めて下さい。
伝達力の品質向上のポイントの一つは,「読み手のことを考えて(読み手の立場に立って)文書を書くこと」です。