このところ,テレビで,振り込め詐欺の被害を伝えるニュースが増えているような気がします。
所沢市では,「本日,市内に,振り込め詐欺を予兆させる電話が多くかかっています。このような電話があったら所沢警察署まで連絡してください」のような内容の放送が,月に2~3回,防災無線を通して流れています。
昨年,私の叔母が,振り込め詐欺の被害に遭いそうになりました。
振り込め詐欺のグループからの電話を信じた叔母は,現金を持って受け渡し場所までタクシーで行き,その場所で受け子に現金を渡してしまいました。しかし,タクシーの運転手と警察官の助けがあり,受け子が逮捕されるとともに現金も戻ってきました。
叔母を乗せたタクシーの運転手が叔母の行動を不審に思ったそうです。警察に連絡しようと思っていたところ,偶然にも,その付近を巡回中のパトカーを見つけたので,パトカーに乗っていた警察官に叔母のことを話したそうです。その警察官はすぐに叔母を探しましたが,叔母を見つけたのは叔母が受け子に現金を渡した後でした。
しかし,幸い,叔母の発見が早かったので,その受け子は逮捕され,現金も戻ったそうです。
叔母は本当に運がよかったです。タクシーの運転手が叔母の行動に不審を持たなかったら・・・,叔母がタクシーを降りた場所の近くに警察官がいなかったら・・・,
間違いなく,現金は戻ってこなかったでしょう。
その事件があったあと,叔母が私に話してくれたことが印象に残っています。
「振り込め詐欺のニュースを見るたびに,私は大丈夫・・・ 振り込め詐欺の被害などに絶対に遭わない・・・ と思っていた」
「でも,孫の名前を名乗った犯人から,女性問題で金が必要になった・・・どうしても今すぐにお金が必要だ・・・と聞いた瞬間に頭が真っ白になってしまった。今になってみれば,孫の声と違ったように思うが,あの時は,パニック状態に陥り,孫の声かどうかの判断ができなかった」
「もしかしたら,振り込め詐欺かもしれないとも思った。でも,もし電話の話が本当だったらどうしようか・・・と思ってしまった。孫を助けたいとの思いが強かったのだろう。また,そのとき,自分のそばに誰かいたらこの電話のことを相談していただろう。しかし,そのとき,誰もいなかったので,早く対応しなくちゃ・・・と思い,現金を渡すことを1人で判断してしまった」
これまで振り込め詐欺に遭った方々の中で,ひと事のときには“自分は大丈夫”と思っていても,いざ自分のことになったら叔母のような心理状態になり,かつ,現金を渡すことを1人で判断してしまったため,振り込め詐欺グループに現金を渡してしまった方も多いと思います。
振り込め詐欺がなかなか減らない理由の1つがここにあると思います。
私の知人のお父さんは,80歳代の後半まで車を運転していました。家族が心配して「運転免許証を返納した方がよい」と言っていましたが,「自分は大丈夫。事故など起こさない」と言い張り運転免許証を返納しなかったそうです。
しかし,車を運転中に,T字路で他の車との接触事故を起こしてしまいました。友人のお父さんの判断ミスが原因だったそうです。幸い,けが人はなく,両方の車が少し傷ついた程度の事故だったそうです。
その事故を契機に,友人のお父さんは運転免許証を返納したそうです。“自分は大丈夫だ”と思っていましたが,この事故から,判断能力や運転能力の低下を実感したそうです。
衝突事故を起こしたことは問題ですが,両方の車がちょっと傷ついた程度の事故で本当によかったです。不幸中の幸いです。
今回の2つのエピソードから,“自分は大丈夫だ”と思っても,“大丈夫ではないこと”が自分の周りにもあることを実感しました。