先月,日産自動車で無資格の社員が車の完成検査をしていたことが大きな問題となりました。
テレビのニュースでもこの問題をトップで報じていました。
このニュースを見て思ったことがあります。どのニュースでも,以下のような考えに基づき今回の問題を伝えています。新聞も同じ考え方です。
*資格者による完成検査は,完成検査に対応した技術力を持った社員による検査なので新車の安全が確保できる。
*無資格者による完成検査は,完成検査に対応した技術力がない社員による検査なので新車の安全が確保できない。
車の完成検査に関する知識がまったくないので間違った意見かもしれませんが,これは,正しいし,誤りでもあると思います。
なぜ,「誤り」の場合もあると思ったのか?
理由は,以下の等号が必ずしも成立しないと思ったからです。
“無資格者=完成検査に対応した技術力がない。”
無資格者でも,完成検査に対応した技術力を持った社員もいらっしゃると思います。
今回,このようなことをブログを書いた理由は,自分の業界のことが頭の中に浮かんだからです。
技術者の資格の中に,「技術士」という国家資格があります。技術士の資格の中には,機械部門,電気電子部門,建設部門など全部で21の部門があります(こちら)。
対受験者に対する平成28年度の合格率は約15%です(各部門での合格率の平均値)。狭き門の試験です。
特に,建設関係の仕事に従事する技術者は,技術士の資格を保有することで,「一人前の技術者だ」と言われます。
技術士の資格を保有している技術者が,難関な試験を合格したことから,このように言われるのかもしれません。
しかし,以下の等号は成立しません。断言できます。建設関係は,自分がいた業界のことなので・・・。
“技術士の資格を保有していない技術者=技術力がない技術者”
私の知り合いで技術士を持っていない方がいます。しかし,技術力は高いです。高い技術力を必要とする業務も担当しています。
その方は,技術士の試験に何度かチャレンジしていますが,なかなか合格できません。会社の上司から,いつも,「君は技術士に値する技術力を持っているのだから,技術士の資格を早く取れ」と言われるそうです。
試験になると緊張して実力が発揮できないタイプのようです。
このようなことが,背景にあったので,以下の等号は成立しないのではないかと考えました。
*無資格者による完成検査は,完成検査に対応した技術力がない社員による検査なので新車の安全が確保できない。
ただ,「無資格者でも,完成検査に対応した技術力があれば,完成検査をしてもかまわない」ということではありません。資格者による完成検査が法律で決められているならば,法律を遵守する必要があります。
このブログでの言いたかったことは,
“資格の有無で,技術者の技術力を単純に評価するのは,技術者の技術力の評価方法として間違っている”
ということです。
今回の日産の件は,「無資格者でも,完成検査に対応した技術力があれば,完成検査をしてもかまわない」という考えがあったのではないでしょうか。