「文書・図表・イラスト 一目でわかる表現の心理技法 海保博之著 共立出版株式会社」という本があります(こちら)。
この本は,わかりやすい文書を書くうえで非常に参考になります。「6つのルールと17の書き方」を考えるときにもこの本を参考にしました(こちら)。
後日,「これまでに読んだ本から」でこの本を紹介しますが,今回は,この本の中に書かれていることに着目した内容のブログを書きます。
今回は,ブログのテーマとして,「見た目を良くする」というタイトルを付けました。
「わかりやすい文書を書く」と聞くと,「構成を考える,結論を先に書く,図や写真を入れる,短い文(簡潔な文)や具体的な文を書く・・・」などを思い浮かべる方もいらっしゃると思います。
これらは,わかりやすい文書を書くうえでの重要なポイントです。
しかし,これらの他に「見た目を良くする」ということも,わかりやすい文書を書くうえでの重要なポイントです。
「一目でわかる表現の心理技法」の中で,海保氏は,以下のようなことを書いています。
相手に情報を伝達するための表現は,好き嫌いといった感情なものとは,本来は無縁である。しかし,相手は不可避的に,感情的な反応をしてしまう。となると,やはり,相手の感情的な面への配慮は必須である。それが,読んでみたい,見てみたいといった動機づけにつながり,さらには,表現内容の知的情報処理の潤滑油になるからである。
書き手から読み手への伝達を目的として,技術者の方々は,仕事で日々様々な文書を書きます。
そのため,書き手が書いた文書を読み手が受け取ったとき,読み手は,「この文書は,図や表がなくダラダラとした文章だけで書かれているため読む気にならない。だから,この文書は読まない」ということはできません。必ず,読み手は,書き手が書いた文書を読みます。
新聞や雑誌の広告あるいはチラシなどは,読みたくなければ,読まなくてもかまいませんが・・・。
「読み手は,書き手が書いた文書を読む必要があるのだから文書の見た目など関係ない。伝達する内容が正しければそれでいい」と思う方もいらっしゃると思います。
しかし,海保氏が書いているように,相手(読み手)の感情的な面への配慮は必要だと思います。
また,この配慮が,わかりやすい文書を書くことにつながります。
タイプⅠの技術提案書:①図や写真がなく文章だけで書いている(ダラダラとした文の羅列),②1種類のフォント・フォントサイズだけで書いている(MS明朝体・10.5ポイントなど),③黒文字だけで書いている
タイプⅡの技術提案書:①内容が理解しやすいように項目に分けて書いている,②図や写真を入れて書いている,③フォントやフォントサイズを数パターン使って書いている,④重要な内容は赤文字などで書いている(重要な内容が着色してある)
タイプⅠで書かれた技術提案書とタイプⅡで書かれた技術提案書のどちらが,「読んでみたい,見てみたい」という気持ちになるか?
このような例を考えると,相手(読み手)の感情的な面への配慮が必要なことがわかります。
「わかりやすい文書」という視点で考えると,やはり,タイプⅡの技術提案書の方が読み手に内容が明確に伝わります。
タイプⅠは少し極端な例と思われるかもしれません。しかし,6年~7年前頃,実際に,タイプⅠのような書き方で書かれた技術提案書を読んだことがあります。技術提案書の内容をチェックする仕事でしたが,正直なところ「読んでみよう」という気持ちになれませんでした。
また,図や写真が無いので,技術提案の内容が不明確でした。
「見た目を良くする」ということを意識して文書を書いてみませんか?