前回と前々回のブログは,「わかりやすく説明する」がテーマでした。
*前々回:「わかりやすく説明する」(こちら)
*前回:「わかりやすく説明する(説明時間を事前に決める)」(こちら)
今回のブログは,「わかりやすく説明する」をテーマとしたブログの第3回です。「わかりやすく説明する(先行オーガナイザーの考え方を使って説明する:パートⅠ)」をテーマとした内容です。
先行オーガナイザーとは,学習する前にあらかじめ提示する枠組みのことです。これは,アメリカの心理学のデイヴィッド・オーズベルが提唱した学習方法に関する考え方です。また,先行オーガナイザーとは認知心理学に係わる用語です。
この学習方法とは,「新たに学習する内容に関する概略的な枠組みを先に提示しておくと,新たに学習する内容が理解しやすくなる」という内容です。
簡単にいうと,生徒に何かを教える場合,はじめに,「今日学ぶことは○○のようなことです」のようなことを話すことです。これを話すことで,生徒はこれから学ぶことが理解しやすくなります。
これを具体的な例で説明します。
認知心理学には「長期記憶と短期記憶」という用語があります。この用語を説明する場合,例えば,以下のように説明します。
これから説明する短期記憶と長期記憶とは,これをコンピューターに例えると,短期記憶とは“メモリ”,長期記憶は“ハードディスク”のようなものです。
もちろん,この説明を理解できる条件はコンピューターの基本的な知識があることです。コンピューターの知識があれば,メモリとハードディスクの機能が先行オーガナイザー(枠組み)となり,「これから説明を聞く内容(短期記憶と長期記憶)とはメモリとハードディスクの機能のようなものだ」と理解します。
その結果,頭の中にあるメモリとハードディスの機能という枠組みに沿って説明を聞くことから,聞き手は短期記憶と長期記憶の説明が理解しやすくなります。
本に書かれている「はじめに」や「目次」は先行オーガナイザーのようなものと考えることができます。
手元に,「伝える力 池上彰著(PHP研究所)」という本があります。この本を開くと,「はじめに」という項目があります。この「はじめに」には,著者がこの本を通して読者に伝えたいことが書かれています。はじめにの次に「目次」があります。目次とは,この本の構成を書いたものです。目次の次に「本文」があります。
「はじめに(orまえがきor序など)・目次・本文」のような構成は,「伝える力」という本だけで見られる構成ではありません。実用書などはこのような構成になっています。
「はじめに」と「目次」とを読むことでわかることは,「この本で著者が読者に伝えたかったことはこのようなことか」と「このような構成になっているのか」ということです。
はじめにと目次を読むことで,はじめにと目次が先行オーガナイザー(枠組み)となり,これから読む本の内容について,「この本で著者が読者に伝えたかったことはこのようなことで,このような構成(内容の流れ)の本だ」と理解します。
その結果,頭の中にある「この本で著者が読者に伝えたかったことはこのようなことで,このような構成(内容の流れ)の本だ」という枠組みに沿って本を読むことから,読者は本の内容が理解しやすくなります。
極端な例ですが,もし,「はじめに」と「目次」がなく,いきなり本文があったらどうでしょうか? 読者は,どのような内容やどのような展開になるのかがわからずに本を読むことになります。これでは,本の内容がすぐに理解できないと思います。
この先行オーガナイザーの考え方を取り入れた説明をすると,聞き手は,説明内容が理解しやすくなります。すなわち.聞き手は,説明内容がわかりやすくなります。
では,「先行オーガナイザーの考え方を取り入れて説明する」とはどのようなことなのか・・・?
この続きは,次回のブログ,「わかりやすく説明する(先行オーガナイザーの考え方を使う:パートⅡ)」で解説します。