今年度の技術士第二次試験に向けて受験勉強を開始している受験生の方も多いと思います。
令和元年度から試験方法が変わりましたが,令和元年度の全部門での試験問題を見て驚いたことがあります。それは,必須科目の出題内容および専門知識の問題を除く選択科目の出題内容が全部門で類似していたことです。
記述式の必須科目の問題は平成24年度以前に出題されていましたが,必須科目の出題内容が全部門で類似していたことは初めてだと思います。
また,選択科目での「応用能力の問題」と「問題解決能力及び課題遂行能力の問題」の出題内容が全部門で類似していたことは,平成25年度からこれらの問題が出題されるようになってから初めてだと思います。
この理由は明確にはわかりませんが,評価項目(資質能力:コンピテンシー)を採点に導入したことと関係があるのかもしれません。
そこで,令和元年度の全部門での試験問題の出題内容を整理してみます。
今回は必須科目の出題内容を整理します。
日本技術士会では,事前に,「必須科目」の出題内容を以下のような内容で公表していました。
令和元年度の全部門での必須科目の問題は,ここに記載されている「出題内容」に沿って出題されていました。
すなわち,「現代社会が抱えている様々な問題について,『技術部門』全般に関わる基礎的なエンジニアリング問題としての観点から,多面的に課題を抽出して,その解決方法を提示し遂行していくための提案を問う」という方針に沿った出題内容です。
具体的には,以下の4つの設問について解答させています。部門や部門内の選択科目の違いで一部異なる内容や表現になっていますが問われてものは基本的に以下の内容です。
(1)技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出する。
(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示す。
(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策を述べる。
(4)(1)~(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を,技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から述べる。
注):電気電子部門や機械部門では,必須科目の2問のうち1問が以上のような設問でした。ただ,他の1問も以上とほぼ類似した設問でした。例えば,電気電子部門では(4)が以下のような設問でした。
(4)(1)~(3)の業務遂行に当たり,技術者としての倫理,社会の保全の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
(1)~(3)は技術士会の出題内容に沿っています。しかし,(4)は出題内容の文章表現から判断すると出題内容に沿っていないように思います。
しかし,「技術者としての倫理」は評価項目(資質能力:コンピテンシー)に記載されているので出題されている理由がわかります。また,「社会の持続可能性」は「現代社会が抱えている様々な問題」の視点から出題されたのかもしれません。
今年度(令和2年度)の出題内容ですが,日本技術士会が提示する出題内容(上で提示した表の内容)が令和元年度と同じならば,今年度も(1)~(3)の設問になると思います。
また,(4)において,今年度も評価項目(資質能力:コンピテンシー)は変わらないと思うので「技術者としての倫理」の観点から問う設問は出題される可能性が高いです。ただ,「社会の持続可能性」については,電気電子部門のような観点(社会の保全の観点)から他部門でも出題される可能性があります。
次回は,選択科目の出題内容を整理します。