前々回は「具体的な文を書く」,前回は「能動態の文を書く」でした。今回は「短い文を書く」です。
■短い文を書く
これは,簡潔でスリムな短い文を書くことです。以下の文を読んでください。
Ⅰ:問題とは,目視点検や打音検査など人の主観に頼った定期点検が主体のため,検査する技術者の点検に対する技術力によって点検結果にばらつきが出ていることである。
Ⅱ:問題とは,人の主観に頼った定期点検が主体のため点検結果にばらつきが出ていることである。
Ⅱのような短い文を書くと文の内容が頭の中にしっかりと残ります。短い文を書くことで文の内容が明確に伝わります。
ここでは,短い文の書き方として「一文一義で書く」と「表現を工夫する」を解説します。
◆一文一義で書く
一文一義とは,一文の中に1つのこと(事柄)だけを書くことです。以下のⅢの文を読んでください。
Ⅲ:高度成長期に集中して建設された多くの橋梁やトンネルの老朽化が急速に進んでいるが,これらの構造物の多くを管理している地方自治体では,技術,資金,人材不足でこれらの老朽化対策が進んでいない。
この文は一文一義で書いてありません。一文の中に2つのことが書いてあります。すなわち,「橋梁やトンネルの老朽化が急速に進んでいること」と「技術,資金,人材不足でこれらの構造物の老朽化対策が進んでいないこと」です。この文は,2つのことが接続助詞の「が」でつながれています。そのため,この文を読むとダラダラとした印象を持つため文の内容が明確に伝わりません。
この文を一文一義で書くと以下のような文になります。
Ⅳ:高度成長期に集中して建設された多くの橋梁やトンネルの老朽化が急速に進んでいる。しかし,これらの構造物の多くを管理している地方自治体では,技術,資金,人材不足でこれらの老朽化対策が進んでいない。
一文一義で書くと簡潔でスリムな短い文になります。また,文に切れ味が出ます。これらのことから,文の内容が明確に伝わります。
◆表現を工夫する
表現を工夫することで短い文を書くことができます。
Ⅴ:建設分野でのICT技術の導入に対する課題を述べることとする。(28文字,句点を含む)
Ⅵ:建設分野でのICT技術の導入に対する課題を述べる。(23文字,句点を含む)
Ⅴは冗長な文です。そのため,この文を読むとダラダラとした印象を持つため文の内容が明確に伝わりません。これに対してⅥの文は,簡潔でスリムな短い文で書いてあるので文の内容が明確に伝わります。表現を工夫することで短い文を書くことができます。
Ⅴの文は28文字です。Ⅵの文は23文字です。その差は5文字です。「5文字だけの差か」と思うかもしれません。しかし,「たかが5文字,されど5文字」です。仮にこのような間延びした表現が答案用紙1枚の中に5箇所あったならば5×5=25文字が無駄になります。答案用紙の1行は24文字なので1行分が無駄になります。1行あれば重要なキーワードを書くことができます。
受験勉強のときだけではなく,日常業務の中で文を書くときにも「表現を工夫して短い文を書こう」という意識を持ってください。例えば,1つの文が70文字だったら「70文字より少ない文字数で書けないか」と考えて短い文を書く方法を考えてください。このようなことを繰り返してトレーニングすれば短い文が書けるようになります。
ところで,1つの文の文字数ですが,技術士第二次試験では72文字(24文字×3行)以内を目安にして文を書いてください。ただ,72文字は目安の文字数です。「簡潔でスリムな短い文を書こう」という意識を常に持って文を書いてください。
今回で,「業務内容の詳細の中で書く文」の解説を終了します。3回の解説内容を参考にして,自分が担当した業務の内容を試験官に明確に伝えてください。
★試験官に内容が明確に伝わる業務内容の詳細の書き方を掲載しています。
★技術士第二次試験・論文の書き方(マンツーマン形式)を行っております。