今回は,「理系のための口頭発表述」を紹介します。
◆「理系のための口頭発表述・聴衆を魅了する20の原則:ロバート・R・H・アンホルト(著)/鈴木炎,イイイン・サンディ・リー(訳)/ブルーバックス(講談社)」
この本は,7年ほど前,大学の恩師から薦められた本です。すぐに購入したのですが読まずに本棚に置いたままでした。他の本を探していて目に留まったのでこの土日で読んでみました。
主に学会発表などを対象とした内容ですが,日常業務の中でも参考なる内容もありました。
■3分割の原則
「発表は,次の3つの部分からなる」と書いています。3分割とは,「導入部・本題・結論」です。具体的に,「『まず連中に〈これから,何の話をするのか〉を話し,次に〈そいつ〉を話し,最後に〈今,何を話したのか〉を話せ』である」と書いています。
この考え方は,会議や打ち合わせなどで何かを説明するときに参考になる内容です。〈これから,何の話をするのか〉を話すと説明内容が理解しやすくなります。このことについては,過去に掲載したジェイタプコブログ「わかりやすく説明する(先行オーガナイザーの考え方を使って説明する:パートⅠ)」,「わかりやすく説明する(先行オーガナイザーの考え方を使う:パートⅡ)」でも書きました。
説明する人が,「これから,何の話をするのか」を冒頭に話してくれると説明する内容が理解しやすくなります。頭の中で,説明を聞く準備をするからです。
■ズーム・インの効果
ズームインとは,映画,テレビなどで,被写体をしだいに大きく映し出していくことです。ズームインの反対がズームアウトです。
この本の中で,以下のように書いています。
〈ズーム・イン〉は,発表をしかるべき展望に組み入れるために役立つ,唯一の手法なのだ。発表は常に,重要な一般原理の説明から始め,それから徐々に,話そうとしている実験モデルへと焦点を絞っていくべきなのである。
-略-
ズーム・インによって,聴衆に,いわば,基準となる枠組み(フレーム)・座標系・鳥観図を提供するのである。聴衆の興味を高めるべく,一般原理から始めて,焦点を狭めてゆき,これから述べる実験とその意義が理解できるところまでもっていくのだ。
これは全体から詳細への考え方と類似した考え方です。いきなり詳細の話をすると全体がわからないので内容が明確に伝わりません。まず,全体の内容を伝え,それから詳細の内容を話すことで聴き手は頭の中を整理しながら説明を聴くことができます。
テレビ番組のクイズで,ピンポイントの写真を見せて「これは何ですか?」と問う問題があります。この時点でほとんど何かわかりません。しかし,ズームアウトしていくと対象物がわかります。
ズーム・インの効果はこれと逆のことです。全体の写真を見せてから詳細の写真を見せることで詳細の写真が理解できます。
「3分割の原則」も「ズーム・インの効果」も会議や打ち合わせで使える方法です。これらの考え方を使って説明すれば,会議や打ち合わせで話す内容が聴き手に明確に伝わります。
「3分割の原則」あるいは「ズーム・インの効果」を使って説明する方法を考えてください。