「伝えるべき内容(例えば,業務の内容等)を書き手が掘り下げて理解していることで,わかりやすい文書を書くことができる」ということを認識する必要があります。
「掘り下げて理解すること」とは「本質を理解すること」と同じです。したがって,「伝えるべき内容を書き手が掘り下げて理解していることで,わかりやすい文書を書くことができる」とは,「伝えるべき内容の本質を書き手が理解していることで,わかりやすい文書を書くことができる」です。
今年で,東日本大震災が発生してから5年になります。東日本大震災では,浦安市で発生した液状化が,地震時の災害として大きくニュースで取り上げられました。
例えば,液状化や液状化に関連したことに関してまったく知識のない人に,液状化のことがわかるように伝えるには,自分が,液状化や液状化に関連したことを掘り下げて理解していないと(本質を理解していないと),とても説明できません。不正確な知識,浅い理解では,相手がわかるはずはありません。
「液状化は,緩い砂質土地盤で・・・・」と説明しても,不正確な知識,浅い理解では,「緩いとはどのような状態ですか?」,「砂質土地盤とはどのような地盤ですか? 砂質土地盤の定義はありますか?」,「なぜ,砂のような地盤だけで液状化が発生し,関東ローム層のような粘土の地盤では液状化が発生しないのですか?」等,掘り下げて質問されたら,説明できないことが出てくると思います。
「掘り下げて理解すること」あるいは「本質を理解すること」でわかりやすい文書が書けることは,よく考えれば当たり前のことかもしれません。しかし,これは,あまり認識されていないような気がします。
「わかりやすい文書の書き方」の講習会では,必ず,「伝えるべき内容を書き手が掘り下げて理解していることで,わかりやすい文書を書くことができる」ということを解説しています。
講習会後,出席者の方々に書いていただいたアンケート結果を読むと,「このことに初めて気が付いた」と書かれた方もいらっしゃいました。今年の2月18日に実施した「わかりやすい文書の書き方」に関する講習会でも,「伝える内容をよく理解していないと伝わらないということに気がつけたのは良かった」とアンケートに書かれた方がいらっしゃいました。
「伝える力(池上彰著:PHP研究所)」の中で,池上さんは,次のようなことを書いています。
“ 「伝える」ために大事なこと。それはまず自分自身がしっかり理解することです。自分がわかっていないと,相手に伝わるはずがないからです。”
掘り下げて理解すること(本質を理解すること)は,「伝える」うえでも「書く」うえでも重要です!
一度,自分の専門分野での専門用語を,小学生にもわかるように説明できるかどうかをチェックしてみたらどうですか?