今回は,「日本語練習帳」の紹介です。
この本を購入したのは,1999年の秋です。その当時,話題になっていた本だったので購入しました。
本の目次は以下のとおりです。
Ⅰ:単語に敏感になろう
Ⅱ:文法なんか嫌い-役に立つか
Ⅲ:二つの心得
Ⅳ:文章の骨格
Ⅴ:敬語の基本
本の中で特に印象に残ったのは「Ⅰ:単語に敏感になろう」です。「思う」と「考える」との使い分けについて書かれています。「なるほど!」と思う内容でした。
著者は以下のような内容でこれを説明しています。
次の言葉の意味の違いをそれぞれ書いて下さい。
「思いこむ」と「考えこむ」
「思い出す」と「考え出す」
その答えとして以下のように説明しています。
「思いこむ」とは,一つの考えを心にもったときに,それ一つを固く信じて他の考えをもてないこと。「考えこむ」とは問題に関わって,あれこれとしきりに考えをめぐらして止まらないこと。
「思い出す」は,一つの記憶を心の中によみがえらせること。「考え出す」は,あれこれ工夫して新しい考えを生むことです。
(略)
つまり,「思う」とは,一つのイメージが心の中にできあがっていて,それ一つが変わらずにあること。胸の中の二つあるいは三つを比較して,これかあれか,こうしてああしてと選択し構成するのが「考える」。
これを読んで,「思う」と「考える」との違いを認識しました。この本を読むまでこのようなことを認識しないで「思う」と「考える」を使っていました。つまり,単語に鈍感でした。
以前,「手法と方法について」というテーマでブログを書きました(こちらを参照してください)。手法と方法との違いを認識することも単語に敏感になることです。
「思う」と「考える」との違いや「手法」と「方法」との違いの認識がなくても,すなわち,単語に鈍感であっても,多くの読み手は,疑問を感じることなく文や文章が読めるとともにこれらの内容も理解できます。そのため,「単語に敏感になること」は,わかりやすい文やわかりやすい文章を書くうえで,重要ではないと思うかもしれません。
著者は「Ⅰ:単語に敏感になろう」の中で,以下のようなことを書いています。
言葉についての敏感さ
言葉づかいが適切かどうかの判断は,結局それまでに出あった文例の記憶によるのです。人間は人の文章を読んで,文脈ごとに言葉を覚えます。だから,多くの文例の記憶のある人は,「こんな言い方はしない」という判断ができます。
(略)
文章もそれと同じです。よいと思われるもの,心をひくものを見馴れているうちに,ああ,これは雑だなとか,ここはおかしいなとか気づくようになる。自分を引きつけるものはその人にとってよいものなのです。だから,自分を引きつけるものを熟読して,それをいっそう鋭く深く受け取るようにすること。次に,よい文章といわれるものを読んで,どこが違うか,どちらがよいかを自分の目で判断すること。
この「言葉についての敏感さ」の内容を読むと,「単語に敏感になること」は,わかりやすい文やわかりやすい文章を書くうえで重要だと思います。多くの文や文章を読み言葉や単語に敏感になることで自分が書いた文や文章に対して,「ここはおかしいな」と気付くようになるからです。
自分で書いた文や文章を読み直し,「ここはおかしいな」と気付くことも,わかりやすい文やわかりやすい文章を書く力のレベルアップにつながると思います。