今回は,「道をひらく」を紹介します。
累計520万部を超えるロングセラーの本です。
2018年7月29日に掲載したブログの中でこの本の中の一編を紹介しました(こちら)。
この本の中に「なぜ」という一編があります。ここで,その内容を紹介します。
【なぜ】
こどもの心は素直である。だからわからぬことがあればすぐに問う。“なぜ,なぜ”と。
こどもは一生懸命である。熱心である。だから与えられた答を,自分でも懸命に考える。考えて納得がゆかなければ,どこまでも問いかえす。“なぜ,なぜ”と。
こどもの心には私心がない。とらわれがない。いいものはいいし,わるいものはわるい。だから思わぬものごとの本質をつくことがしばしばある。こどもはこうして成長する。“なぜ”と問うて,それを教えられて,その教えを素直に自分で考えて,さらに“なぜ”と問いかえして,そして日一日と成長してゆくのである。
大人もまた同じである。日に新たであるためには,いつも“なぜ”と問わねばならぬ。そしてその答えを,自分でも考え,また他にも教えを求める。素直で私心なく,熱心で一生懸命ならば,“なぜ”と問うタネは随処にある。それを見失って,きょうはきのうの如く,あすもきょうの如く,十年一日の如き形式に堕したとき,その人の進歩はとまる。社会の進歩もとまる。
繁栄は“なぜ”と問うところから生まれてくるのである。
技術者が自分の技術力をレベルアップさせる方法の1つが“なぜ”と自問してみることです。
何かを学んだとき,「そのようなことか」と思うのではなく,「なぜ,そのようになるのか?」と自問することで技術力がレベルアップします。
例えば,住宅を造る様々な工法を紹介する専門書に「〇〇工法は,木造住宅を造る場合だけに適用できる」と書いてあったとします。それを読んだとき技術者Aと技術者Bでは,読んだあとの対応が異なりました。
■技術者A
「〇〇工法とはそのようなものか」で終わる。
■技術者B
「〇〇工法は,なぜ,木造住宅を造る場合だけに適用できるのか?」,「〇〇工法は,なぜ,鉄筋コンクリート造住宅を造る場合には適用できないのか?」と「なぜだろう?」と自問してその答えを考えたり調べたりして〇〇工法について掘り下げて理解する。
さて,住宅を造る様々な工法に関する技術力がレベルアップしたのは,技術者Aでしょうか,あるいは,技術者Bでしょうか?
この答えを考えると,技術者にとって“なぜ”と自問することの意味がわかると思います。
「内容が明確に伝わる技術文書の書き方」をテーマにしたセミナーや社員研修では,この「なぜ,と自問すること」について詳しく解説しています。セミナーや社員研修の終了後に書いていただくアンケートの中に,「『なぜ,と自問すること』が重要であることがわかった」と書く方もいらっしゃいます。
松下幸之助氏のこの一編を改めて読んで,“なぜ”と自問することの意味を再確認しました。