「業務内容の詳細」完全攻略

業務内容の詳細とは,技術士第二次試験の受験申込み時に提出する技術士第二次試験受験申込書と業務経歴票のうち,業務経歴票の中で記載する項目の1つです。過去に実施した業務から1つを選択して,その業務に対する立場と役割,業務上の課題,技術的な提案,技術的成果などを720字以内で記載します。

「業務内容の詳細」攻略のポイントとは,「わかりやすい業務内容の詳細」を書くことです。

業務内容の詳細で書いた内容は口頭試験での質問対象になります。そのため,試験官に業務の内容が明確に伝わるように書くこと,すなわち,業務内容の詳細をわかりやすく書くことは重要な受験対策です。

そこで,「わかりやすい業務内容の詳細の書き方」を3回に分けて解説します。

◆第1回のキーワード:内容が統一された業務内容の詳細を書く
◆第2回のキーワード:業務の棚卸をする
◆第3回のキーワード:わかりやすい文を書く
「内容が統一された業務内容の詳細を書く」

第1回のキーワードは,「内容が統一された業務内容の詳細を書く」です。
これを言い換えると,「内容のねじれた業務内容の詳細を書かない」です。


項目(見出し)について

業務内容の詳細を書く場合,項目(見出し)を考えて書きますが,項目立てに決まりはありません。この解説の中では,(公社)日本技術士会が出している「技術士第二次試験受験申込み案内」を参考にして,「立場と役割・業務上の課題・技術的な提案・技術的成果」の4項目を,業務内容の詳細を書くうえでの項目(見出し)とします。

わかりやすい業務内容の詳細とは

「わかりやすい業務内容の詳細」とはどのようなものでしょうか?
それは,読み手(試験官)に業務の内容が明確に伝わる業務内容の詳細のことです。
「明確に伝わる」を言い換えると「はっきり伝わる」になります。

以下の2つの文を比べてください。これは,ある技術的成果を書いた文だと考えてください。
どちらの文が,試験官に技術的成果が明確に伝わる(はっきり伝わる)でしょうか?

Ⅰ:提案した技術的な提案によって,高齢者ドライバーの事故数を大幅に低減できた。

Ⅱ:提案した技術的な提案によって,高齢者ドライバーの事故数をピーク時の約1/3に低減できた。

解説するまでもなく,技術的成果が明確に伝わる(はっきり伝わる)のはⅡの文です。また,「業務内容の詳細にはどちらの文で技術的成果を書くべきか?」もわかると思います。

業務内容の詳細の書き方も同じです。Ⅱの文のように内容が明確に伝わる(はっきり伝わる)ように書く必要があります。

内容がねじれた業務内容の詳細について

「わかりにくい業務内容の詳細」の主犯格である「内容がねじれた業務内容の詳細」について解説します。「内容がねじれた業務内容の詳細」とは,課題・提案・成果の内容がねじれている業務内容の詳細のことです。

業務上の課題,技術的な提案,技術的成果はすべて関連しています。「課題に対する提案,提案に対する成果」です。課題と提案と成果はつながっています。しかし,「内容がねじれた業務内容の詳細」にはこれらの間の統一がありません。統一がないとは例えば次のようなことです。

課題の中に工事費のコスト削減に関することが書かれていないにもかかわらず,成果の中に「提案した対策によって,工事費のコストの削減が達成できた」と書いてあることです

実際,これまでに読んだ業務内容の詳細にこのような内容が書かれたものがありました。

このような「内容がねじれた業務内容の詳細」を読むと頭の中が混乱します。読み終わった感想は,「エッ・・・?」という感じです。

なぜ,このような「内容がねじれた業務内容の詳細」を書いてしまうのでしょうか?
その最大の理由は,「課題は課題,提案は提案,成果は成果」と考えているからです。
つまり,これらをバラバラに考えているからです。

*課題は何だったかなあ?
*提案は何だったかなあ?
*成果は何だったかなあ?

内容が統一された業務内容の詳細を書く(一体で書く)

このようにバラバラに考えずに「課題に対する提案,提案に対する成果」と考えてください。
すなわち,課題・提案・成果を一体で書いてください「課題に対する提案,提案に対する成果」と考えて書けば,内容が統一された業務内容の詳細を書くことができます。

「業務の棚卸をする」

「わかりやすい業務内容の詳細の書き方」の第2回です。
第2回のキーワードは「業務の棚卸をする」です。

頭の中の交通渋滞

第1回では,内容がねじれた業務内容の詳細を書いてしまう最大の理由として,「課題は課題,提案は提案,成果は成果と考えているから」と書きました。

では,なぜ,このように考えてしまうのでしょうか? その原因の1つが,頭の中で交通渋滞が発生しているからです。業務内容の詳細を書こうとしているとき,頭の中はどのようになっているのでしょうか?

「立場と役割は何だったかなあ?」,「業務上の課題は何だったかなあ?」,「技術的な提案は何だったかなあ?」,「技術的成果は何だったかなあ?」,「こんなことが大変だったなあ」,「こんな解決策を考えたなあ」,「こんな結果だったなあ」,「何をどう書こうか」,「忘れていた・・〇〇もあったな」・・・といろいろ考えている状態になっています。すなわち,頭の中がごちゃごちゃになっています。これは,頭の中で交通渋滞が発生している状態です。

このような交通渋滞が発生している状態で業務内容の詳細を書くと,「内容がねじれた業務内容の詳細」に向かって進んでしまうかもしれません。

業務の棚卸

頭の中の交通整理をすればこのようなことにはなりません。では,どのように交通整理を行うのか?

そのキーワードは,業務の棚卸です。業務の棚卸とは,業務内容の詳細を書く前に,一度,業務の内容をすべてノートに書き出すことです。

書き出すときには,業務のスタートからエンドまでについて自問自答しながら,頭の中にある業務に関することをノートにすべて書き出してください。

例えば,「どのような立場で業務を行ったか」,「業務の中では何を担当したか」,「目的は何か」,「方針は何か」,「どのような検討を行ったか(検討項目は何か)」,「どのような手順で業務を行ったか」,「設計条件は何か」,「業務を実施するうえでの課題は何か」,「課題に対する解決策は何か(技術的な提案は何か)」,「具体的にどのような検討を行ったか」,「どのような解析方法で検討したか」,「具体的にどのような結果が出たか」,「具体的な成果は何か」,「結論に至った経緯は何か」,「今後の課題は何か」など,自問自答しながらこれらの答えをノートに書き出します。このように自問自答しながら書き出すと業務に関して忘れていたことも思い出します。

頭の中にあることをすべて書き出したら,書いたことを読み返し,業務の内容を確認してください。

確認したら,ノートに見出しとして「課題・提案・成果」と書き,そこに,業務の棚卸の結果に基づき,「課題・提案・成果」に関することをそこに書き写してください。

また,これらの3項目だけではなく,業務内容の詳細に書くべき「立場と役割」に関しても書き写してください。

この整理が終わったら,これに基づき業務内容の詳細を書いてください。一度,自分が行なった業務をスタートからエンドまで確認したうえで「課題・提案・成果」を考えると内容のねじれの発生を防ぐことができます。

課題・提案・成果の書き方

課題・提案・成果を書くときには,簡潔な文で書いたり,書き方を工夫して書いてください。720文字以内で業務内容を書くため,ダラダラ書いていると所定の文字数以内で業務内容が書けません。簡潔な文で書いたり,書き方を工夫することでわかりやすい業務内容の詳細が書けます。

例えば,まず,「課題は○○であった」のように課題を簡潔な文で書き,そのあとに〇〇に関する説明を書くような書き方をすれば試験官に課題が明確に伝わります。

業務の棚卸の利点

業務の棚卸には以下のような利点もあります。

① 業務の棚卸をすることで,業務経歴票を提出したあと「アッ・・・〇〇を書き忘れた」というミスを防げます。

② 業務の棚卸は口頭試験対策も兼ねています。口頭試験では業務内容の詳細に書かれてあることに関しての質問があります。業務で行ったことをすべて書き出しておけば(整理しておけば)口頭試験の対策にもなります。

「わかりやすい文を書く」

「わかりやすい業務内容の詳細の書き方」の第3回です。第3回のキーワードは「わかりやすい文を書く」です。わかりやすい文とは,読み手(試験官)に内容が明確に伝わる文のことです。

わかりやすい文の書き方

業務内容の詳細とは文の集まりです。複数の文が集まり文章になります。複数の文章が集まり業務内容の詳細になります。業務内容の詳細の最小単位である文をわかりやすく書くことで,わかりやすい業務内容の詳細が書けます。

「技術者のためのわかりやすい文書の書き方(こちら)」では,わかりやすい文の書き方として以下の5つの書き方を解説しています。

① 具体的な内容の文を書く

② 意味が明確な文を書く

③ 能動態の文を書く

④ 短い文を書く

⑤ 文法を守って書く

ここでは,この中から,業務内容の詳細を書くうえで特に重要な①と④について解説します。

具体的な内容の文を書く

具体的な内容の文を書くこととは,内容が頭の中に浮かんでくる文を書くことです。

例えば,以下の文を読んでください。

Ⅰ:未対策の場合,トンネル掘削に伴い国道〇〇号線の路面で大きな沈下量が発生する解析結果となった。

Ⅱ:未対策の場合,トンネル掘削に伴い国道〇〇号線の路面で約15cmの沈下量が発生する解析結果となった。

Ⅲ:今回提案した対策によって,鉄道利用者の利便性が向上した。

Ⅳ:今回提案した対策によって,鉄道利用者の乗り換え時間をこれまでの10分から3分に短縮することができた。

Ⅰの文ではなくⅡの文を読むことで,また,Ⅲの文ではなくⅣの文を読むことで,文の内容が頭の中に浮かんできます。

業務内容の詳細にはどちらの文を書くべきかわかると思います。

短い文を書く(一文一義で書く)

長い文を書くより短い文を書いたほうが,試験官の頭の中に文の内容が入りやすいです。ここでは,短い文を書く方法の1つとして一文一義について解説します。

例えば,以下のⅤとⅥを比べてください。

Ⅴ:本業務は,自動車と歩行者・自転車との接触事故が多発している市道〇〇号線での道路構造の改良検討であるが,私は,主任技術者として,事故低減のための道路の平面設計,縦断設計および横断設計を担当した。

Ⅵ:本業務は,自動車と歩行者・自転車との接触事故が多発している市道〇〇号線での道路構造の改良検討である。私は,主任技術者として,事故低減のための道路の平面設計,縦断設計および横断設計を担当した。

Ⅴに比べてⅥのほうが頭に入りやすかったと思います。Ⅴは,接続助詞の「が」によって2つの文がつながっています。そのため,頭の中に内容が入りにくくなります。それに対して,Ⅵは,Ⅴを2つの文に分けて書いています。すなわち,前の文は「業務の目的」,後の文は「業務で担当したこと」です。

文を書く場合には,Ⅵのように内容ごとに文を区切って書く,すなわち,1文の中に1つの内容(事柄)だけを書いてください。これを「一文一義」と言います。また,一文一義で文を書くと,主語と述語の対応の誤りなど文法上の誤りを防ぐことができます。

業務内容の詳細を書く場合には,「具体的な内容の文を書く」「短い文を書く(一文一義で書く)」を意識して書いてください。この2つを意識して書くだけで内容のわかりやすさが向上します。

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