技術士第二次試験の合格に必要なこととは,“合格点が取れる解答を考えるための技術力を持つこと”と“わかりやすい答案を書くこと”です。
このうち,「合格点が取れる解答を考えるための技術力」が合格に必要なことはすぐに理解できると思います。この技術力とともに,わかりやすい答案を書くことも合格に必要なこととの認識も持ってください。
わかりやすい答案とは,試験官に解答が明確に伝わる答案のことです。
まず,わかりにくい答案の例を示します。以下のような問題が出題されたとします。
地球温暖化の原因の1つとして二酸化炭素の増加があります。あなたが考える二酸化炭素の増加を防ぐ対策を書きなさい。
ここで,以下のような解答を書いたとします。
私の考える対策とは,以下のような対策を行うことである。
①冷房の設定温度を1℃高く,暖房の設定温度を1℃低く設定する。
②風呂の残り湯を洗濯に使う。
③買い物に行くときには買い物袋を持参する。
この解答には,二酸化炭素の増加を防ぐ対策がいろいろと書かれています。しかし,この解答を読んでもこの書き手の考えが明確に伝わりません。この解答を読むと「対策がいろいろと書かれているが,結局,何が言いたいのだろう?」と思います。
これが,わかりにくい答案の例です。わかりにくい答案を読むと,「結局,何が言いたいのだろう?」と思います。すなわち,わかりにくい答案では,試験官に解答が明確に伝わりません。
わかりやすい答案とは,これとは反対に,「このような解答を考えたのか」のように書き手の考えが明確に伝わる答案のことです。
頭の中で交通渋滞が発生していることが,わかりにくい答案を書く原因です。問題を読みその解答を考えているとき受験生の頭の中は,「あれを書こう」,「あれも書かなきゃ」のような状態,すなわち,頭の中がごちゃごちゃな状態になっています。これが,頭の中の交通渋滞です。
交通渋滞が発生した状態で答案用紙に解答を書くと文がただ並んでいるだけのような答案になります。このような状態で書かれた答案は,わかりにくい答案になります。
前項で提示した解答例は,頭の中の交通渋滞が発生した状態,すなわち,「二酸化炭素の増加を防ぐ対策として,○○を書こう,□□を書こう,△△も書かなきゃ」のような状態で解答を書いた結果,わかりにくい答案になりました。
(1)頭の中の交通整理をしたうえで書く
頭の中の交通整理をすることでわかりやすい答案を書くことができます。頭の中の交通整理とは,「『解答すべきことの要点』と『解答すべきことの要点に関する説明』を考えること」です。次に,考えたことを答案用紙に書けばわかりやすい答案を書くことができます。
ここで,前項で提示した問題を基に,わかりやすい答案の書き方の具体的な方法を解説します。
なお,以下では,「解答すべきことの要点」を「解答の要点」と書きます。
(2)解答の要点を考える
解答の要点とは,解答を簡潔に言ったことです。
この問題での解答すべきこととは,「あなたが考える二酸化炭素の増加を防ぐ対策」です。そこで,解答を簡潔に言ったこととして,「私が考える対策とは,家庭でできる取り組みを行うことである」を考えました。
(3)解答の要点に関する説明を考える
ここでの解答の要点は,「家庭でできる取り組みを行うこと」です。そこで,この要点の説明,すなわち,家庭でできる取り組みの具体的な対策として,「①冷暖房の設定温度,②風呂の残り湯,③買い物袋」を考えました。
(4)考えたことを答案用紙に書く
(2)と(3)で考えたことを答案用紙に書きます。結果を以下に示します。
私が考える対策とは,家庭でできる取り組みを行うことである。具体的には,以下のような対策を行うことである。
①冷房の設定温度を1℃高く,暖房の設定温度を1℃低く設定する。
②風呂の残り湯を洗濯に使う。
③買い物に行くときには買い物袋を持参する。
どうでしょうか? 解答が明確に伝わったと思います。このように書くことで,わかりやすい答案(試験官に解答が明確に伝わる答案)を書くことができます注1)。
注1):「2.わかりやすい答案とは」で提示した解答例は,解答の要点が書かれていなかったために,わかりにくい答案になりました。
試験では,「解答の要点は何か?」,「解答の要点に関する説明は何か?」と頭の中の交通整理をしてから答案用紙に解答を書いてください。
【参考文献】
「『技術士第二次試験 建設部門 答案作成のテクニック 5つの手順で書いてみよう』:森谷仁著 オーム社 平成29年3月20日」